胃の中は強い酸性に保たれているので、胃の中に生物は住めないと長年考えられていました。ところが、1980年代に胃粘膜の中に生息する「ヘリコバクター・ピロリ菌」の存在が明らかになり、この菌によって胃炎・胃潰瘍などが引き起こされることがわかってきました。
ピロリ菌は衛生環境の整わない国や地域で感染率が高く、日本でも1940年代およびそれ以前に出生した年齢層では感染率が高い傾向にあります。一方で1950年代以降、高度経済成長期頃に出生した年齢層を境に急速に感染率は低下。2017年時点で日本における感染者数は約3,600万人といわれています。※
芋虫のようならせん状の菌で、プロペラのようなひげ(べん毛)が生えています。ピロリ菌は、このべん毛を使って胃粘膜に進入し、潜伏しています。そして胃を守る粘液層がピロリ菌の住家になります。
ピロリ菌は細胞に対する毒素を出すだけでなく、ウレアーゼという酵素を持っていて、その酵素が尿素を分解してアンモニアを作ります。そのアンモニアが直接胃壁を傷める原因ともなります。なぜ、強酸性の胃の中で生きることができるかというと、アンモニアで菌の周りの酸性を弱め、自分の周りを中性化しているからです。
ピロリ菌は、胃粘膜にのみ感染し胃の外では長期間生存できません。そのため、衛生環境の整った現代では感染経路の約8割が家庭内での胃~口感染とされています。
感染時期の特徴としては、5歳までに感染すると生涯にわたり感染が持続することがわかっています。一方で成人してからの感染は一時的で生涯にわたり持続することは少ないとされています。
気になる症状がある場合は、医師へご相談ください。
監修
国立佐賀大学医学部卒業後、胃腸・内視鏡専門病院にて胃腸疾患と内視鏡検査・治療に従事。胃腸疾患の外来診療を行いながら、年間 3000 件弱の内視鏡検査・内視鏡手術を施行。2016年4月より巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや便秘などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れ、診療を行っている。
まとめ
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