「胃もたれ」という言葉に正確な定義はありませんが、一般的には食後の消化不良で、胃の辺りが重たく感じるような症状を指します。医学的には「ディスペプシア症状」と呼ばれる心窩部(みぞおち周辺)の症状の一部として扱われる場合が多いです。ディスペプシア症状は様々な要因が複合的に関与して出現しますが、代表的な要因別と胃薬について解説します。
通常、胃は一定以上の食べ物が入ると、より多くの食べ物を受け入れるために一部が弛緩(筋緊張が取れる)し、それに引き続いて蠕動運動と呼ばれる、胃内で消化された食べ物を少量ずつ小腸側に送り出す運動が起こるが、この働きが鈍くなると、胃内に食べ物が長くとどまり、いわゆる「胃もたれ」状態となる。
上述した「蠕動運動」は通常、胃の入り口方向(食道側)から出口方向(十二指腸側)に時間をずらしながら進むことで食べ物を送り出しますが、この運動の協調性が保たれなくなると胃内に食べ物が長くとどまる原因となるばかりか、十二指腸(小腸)側から胃内への食残や消化液の逆流が起こるケースもあります。
胃の運動機能を活発にすることで、胃の内容物を小腸側へ送り出すのを助ける働きをする薬のことを指します。
漢方薬の中にも胃の運動機能を改善する作用を持つものがあることが知られています。多くの科学的根拠による裏付けがなされており、その有効性が知られているものもあります。
胃酸による刺激が様々な上腹部症状と関連することが知られています。特に胃酸分泌を促す食品としてはアルコールや高脂肪食、チョコレートなどが有名で、これらの食品を避けるなどの生活習慣の改善も症状の緩和には有効です。
胃酸分泌過多に伴う胃もたれ症状に対しては、酸分泌抑制薬が有効です。
胃酸分泌抑制薬は胃酸の分泌そのものを抑えるのに対して、胃酸の酸性度を抑える目的のお薬です。即効性は期待できますが作用時間はより短いため、主に頓服薬として用います。(例:炭酸水素ナトリウム、沈降炭酸カルシウム)
睡眠不足や不規則な食事、ストレスに関連して胃もたれ症状が出現・悪化するケースもあります。まずお薬に頼る前に、日常の生活習慣を見直すことから始めましょう。
胃粘膜の保護や、組織の修復作用をもつお薬です。
消化を助けてくれる役割を持つ酵素です。
いわゆる「胃薬」と呼ばれる類のお薬で、これまでに述べた様々な成分がミックスされたタイプのお薬です。
単なる胃もたれと思っていたら、実はピロリ菌の感染に伴う症状だった、というケースや、その他の思わぬ病気が隠れている場合もありますから、症状が長引く際には自己判断せず、早めに病院を受診しましょう。また市販のお薬で症状が取れない場合にも、処方の薬剤では効能の異なるものがありますので医師にご相談ください。
監修
診療科目:
消化器内科、胃腸内科、内視鏡内科
経歴:
地元、秋田大学医学部卒後、同大学病院消化器神経内科学講座勤務。
2018 年がん研有明病院入職
2021 年同院副医長(健診センター・下部消化管内科兼任)
2022 年より品川胃腸肛門内視鏡クリニック院長
医学博士、日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医、日本消化器病学会専門医
まとめ
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