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Serendip Pharmacy & Pharmacist トピックス

HIP研究会
認知、嚥下など高齢者の機能低下への対応をチームで考える
第9回HIP研究会シンポジウムより

第9回HIP研究会が、高知市で開催され、250人を超える薬剤師が集まり活発な議論が繰り広げられました。2日目午前には、エーザイ協賛のシンポジウム「口から食べることの素晴らしさ~認知、嚥下などさまざまな機能低下への対応をチーム医療の中で考える」が、タカノ薬局の長谷川聡先生(NST専門薬剤師)の座長で行われました。

薬剤師の病棟常駐はメリットがいっぱい

まず登壇された高知医療センター薬剤局長の田中照夫先生は「急性期病院におけるチーム医療~薬剤師病棟常駐とNST活動」と題して講演。薬剤師が全病棟と救命救急センターに常駐して活動している同病院の様子を説明し、薬剤師が病棟にいることで潜在化していた病棟内の薬剤管理上の問題点を拾い出して改善できるようになった、医師や看護師の薬剤の適正使用に関する意識が波及的に向上した、医師や看護師とより良いコミュニケーションが図れるようになり、薬剤師が日常的に薬に関する相談を受けるようになった――など多くのメリットがあることを語りました。

また田中先生は、同院のNSTチームの活動と、NSTチームにおける薬剤師の役割について説明。全病棟で患者さんに栄養スクリーニングを行い、栄養管理が必要な患者さんには短時間で高密度な介入を行っていることを紹介。NSTチームの薬剤師は、回診やカンファレンスに参加して、経管栄養剤の有無と投与方法、配合変化や他の投与薬剤の影響の有無など、薬剤を中心とした栄養管理に関する問題点を抽出し、フロア担当薬剤師にフィードバックして薬剤管理指導に反映するといった役割を担っていると説明しました。

田中先生は、「病棟に常駐することで、薬剤師は医療スタッフや患者さんから顔の見える存在になれました。地域においても、患者さんや医療スタッフから、薬剤師の顔が見える活動をしていってください」と、地域で活躍する薬剤師たちに呼び掛けました。

「褥瘡ゼロはまさにチームの力」

続いて、鳴門山上病院診療協力部部長の賀勢泰子先生が、「嚥下障害のある患者への服薬支援~チーム医療の実践と地域連携」と題して講演しました。同院は、一般病棟40床、回復期リハビリテーション病棟30床、療養病棟90床、介護保険適用療養病棟120床という、長期入院の高齢者が多い病院です。賀勢先生は、「チーム医療・ケアの実践」を理念に、多職種が横断的に関わる委員会を設置し、取り組んでいる様子を話しました。

その一例として、チームで褥瘡防止に取り組んだ結果、2009年に全入院患者の褥瘡をゼロにできたことを紹介。「要介護度4以上の患者さんがほとんどの病棟で、褥瘡をゼロにできたことはまさにチームの力」と強調しました。

さらに賀勢先生は、口から食べることのすばらしさを説明し、「患者さんの『食べること』をどう支えられるかを、一人ひとりの薬剤師が考えることが大切」と会場の薬剤師に語り掛けました。

賀勢先生は、嚥下困難を来たす高齢者は意外と多く、なかには自覚がない患者さんがおられることを説明した上で、「嚥下困難の患者さんに経管栄養法を導入する前に、今一度、理解力や嚥下能力、身体能力などさまざまな面から検討して、口から食べられる方法がないかを探って支援していくことが大切です」と訴えました。

そのためには、各職種のスタッフがそれぞれに専門性を発揮してチームで支援していくことが必要です。賀勢先生は、「チームの中で薬剤師は、嚥下機能の低下が薬による影響ではないかを確認する役割をしっかり担ってほしい」と強調。嚥下機能に影響を与える薬として、錐体外路障害を起こす薬、意識レベルを低下させる薬、食欲低下を起こす薬などを挙げました。加えて、唾液分泌の低下によっても食物が飲み込みづらくなり得るため、「唾液分泌に影響を与える薬にも十分、注意が必要」と解説しました。

さらに、嚥下困難のある患者さんの服薬に関して言及。嚥下困難があると、口腔内崩壊錠であっても咽頭に残ることがあること、嚥下補助剤はテクスチャーに違いがあるので吟味して使う必要があること、増粘剤は患者さんの嚥下機能に合わせた適切な固さに調節することが大切であること――などを説明しました。

賀勢先生は、「患者さんが薬を袋から取り出して、飲むまでを見届け、服用薬の効果や副作用を継続してモニタリングするのも薬剤師の仕事。患者さんに摂食・嚥下に関わる問題が見られたら、まずは薬の影響ではないかを疑うことから始めて、さらに歯科医師やリハビリテーションスタッフとも連携するといったマネジメントを行うことが大切です」と語りました。

治せる摂食・嚥下困難の原因を見逃すな

大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部医長の野原幹司先生は、「嚥下のメカニズム~嚥下を考慮した剤形選択のために」と題して、摂食・嚥下障害の基礎知識を交えて講演しました。

野原先生は、嚥下障害であると気づかれていない患者さんが少なくないことを指摘。「嚥下障害だと分かれば対処できることがほとんど。誰も気づかないことが問題です」と話し、「薬剤師も、嚥下障害を見つけ出す役割を担ってほしい」と訴えました。

また野原先生は、例えば「ときどきむせる」と訴える患者さんがどういう状態かを知ることが大切と語り、嚥下の5期(先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)について、動画を交えて詳しく解説しました。

その中で、特に薬による影響が大きいのは、食物を食物と認知し口に入れるまでの先行期と口に含んで咀嚼して食塊を形成する準備期であることを説明。先行期では、食物の認知ができないと誤嚥につながるため、意識レベル低下を来たす薬の服用時には気をつける必要があると話しました。また、唾液分泌が減少するドライマウスでは、食塊の形成を妨げ、嚥下しづらくなることを説明。「ドライマウスは、実は薬剤性のものが最も多いのです」と注意を促しました。

また、嚥下機能が低下している高齢者では、誤嚥時に咳き込むことができず、異物が気管に入ったままとなりやすいため、嚥下機能が低下した高齢者に鎮咳薬が出ているときは注意が必要だと語りました。

さらに野原先生は、嚥下機能が低下した患者さんの服薬について解説。オブラートによる服薬は、途中でオブラートが破れてうまく飲み込めない場合があること、薬が口腔内に残留していることが多く、薬効が得られないうえ副作用が起こる可能性があることなどを紹介し、特に注意を要すると訴えました。

最後に、野原先生は処方薬の見直しなどによって摂食・嚥下障害が緩和して見違えるように元気になった高齢者の症例を動画で紹介し、「嚥下障害には治るものと治らないものがありますが、治る嚥下障害で一番多いのは薬によるものです。薬剤性の嚥下障害や認知症は絶対に見逃さないでほしい。そのためには、患者さんから見た服薬指導を行ってほしい」と強調しました。

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