知っ得 明日からできる調剤過誤防止対策 事例
業務手順書を整備し安全管理体制を強化
木島薬品
木島薬品 中野北薬局(長野県木島平村)長野県の北信地区で7薬局を運営する木島薬品(本社:長野県木島平村)では、全スタッフを対象に、安全管理に関する研修を定期的に開催し、薬局ごとに業務手順書を改訂して、調剤過誤防止に努めています。
業務手順書の重要性を認識し見直しへ
2007年4月、薬局ごとに「医薬品の安全使用のための業務手順書」の作成が、義務付けられました。日本薬剤師会が公表した『「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(薬局版)』※などを活用し、実作業手順に合わせて加筆・修正して使用している薬局が多いようですが、実際には内容を十分に検討せずに、そのまま使用している薬局も少なくありません。
木島薬品の安全管理・機器管理課長を務める益満健雄先生木島薬品の安全管理・機器管理課長を務める益満健雄先生は、「弊社の薬局でも、当初は日薬のマニュアルを少しアレンジする程度で使用しており、業務手順書の重要性を十分に理解していたとは言い難い状況でした」と打ち明けます。
しかし益満先生は、近隣の病院で開かれた安全管理に関するセミナーに参加したのをきっかけに、手順書は「薬局にとって非常に重要なもの」と認識を改めたそうです。「何より、患者さんに誤った薬を渡さないために、手順書を定めて遵守することが大切です」と話します。さらに、「万一、調剤過誤が起こり、事故に発展してしまった場合、調剤が薬局の業務手順書通りに行われていたかが裁判の争点になることがあると聞きました」と益満先生。業務手順書の重要性を感じるとともに、その整備が不可欠だと強く感じたそうです。
※日本薬剤師会では、同会ウェブサイト上で、『「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(薬局版)』を会員向けに公表。さらに、薬剤師数や応需処方せん枚数、OTC薬の販売の有無など、薬局の運営形態に合わせた12種類の手順書を日薬ウェブサイト上で会員向けに公開しています。
手順を統一し手順書の遵守を目指す
そこで、2009年1月、各薬局の安全管理体制を強化することを目的に、まずは薬局ごとの実際の業務に即した業務手順書の作成に取り組み始めました。
最初に行ったのは、当時使っていた業務手順書と実際の業務手順に違いがないかを検証する作業でした。これらは薬局ごとに行い、手順書の記載と実際の業務が違う部分について、実際の業務手順を書き出していったそうです。
こうした作業を進めるなかで、同じ業務でも人によって手順が違うことが分かってきました。例えば、全自動錠剤分包機で分包したものの鑑査方法。「全包について、数と薬に記された識別番号を確認する」という薬剤師もいれば、「最初の一包は数と識別番号を確認するが、残りは数だけを確認する」という薬剤師もいます。そうしたスタッフ間の差異を減らし、薬局ごとの標準の手順を決めるとともに、業務手順書の記載を変更していったそうです。
「標準の手順を決めるに当たっては、業務に無理を生じないことが重要だと感じました」と益満先生。安全性を高めることを考えるあまり、現実的ではない業務手順にしてしまっては、遵守できず、かえって安全性を低めてしまうことになりかねません。
(図1)中野北薬局で使用している「医薬品の安全使用のための業務手順書」。随時改訂を加えている。
例えば、前述の全自動錠剤分包機で調製した薬剤の鑑査の場合、全包の識別番号までをすべて確認するには手間がかかること、さらに全自動錠剤分包機の場合、充填ミスもしくは入力ミスをしていなければ、違ったものが混入する可能性は少ないことなどを勘案し、実際の手順書には「各包装内の薬剤は、数量を数え、錠剤の形状や大きさ、色調などを確認し、最初と最後の包装内の薬は識別番号で確認する」旨を記しています。
さらに、薬剤情報提供書に識別番号を印字するように設定し、記憶に頼らず薬剤情報提供書を参照して鑑査するといった新たな工夫も加えました。このように、一つひとつの業務を見直しながら、業務手順書を作成していったそうです(図1参照)。
手順書の改訂を行う取り組みも
業務手順書が出来上がれば、それで終わりではありません。手順を定期的に見直し、手順書も改訂していく必要があります。そこで同社では、インシデントレポートを収集し、手順の改善と、それに伴う手順書の改訂に生かす取り組みも始めました(図2参照)。
(図2) 中野北薬局内インシデント・アクシデント報告書【PDF:312KB】
インシデントレポートといえば、「スタッフがなかなか書いてくれない」といった悩みが少なくありません。同社でも同様の悩みがあったそうです。
そこで、益満先生はまず、インシデントレポートで挙げたミスに関しては、当事者を責めないこと、ただし同じようなミスが続く場合には、注意と指導の対象になることを、全員に示しました。
さらにインシデントレポートを提出しない大きな理由の一つに、「自分の失敗を明らかにしても良いものか」「他人のミスを指摘するようなことをしてよいものか」と躊躇する気持ちが関係していることから、インシデントレポートの提出者には「提出してくれてありがとう」という言葉を添えるようにしています。加えて、自分自身が率先して書くことを心掛けているそうです。
益満先生は、「この1年で、スタッフの意識がずいぶん変わったと思います。安全管理を意識し始めたことによって、これまでとは、鑑査の仕方ひとつとってもずいぶん違ってきています」と話します。この4月からは、各薬局で2カ月に1回のミーティングを開催し、インシデントレポートを基に、具体的な対策を立て、業務手順書を改訂しているという木島薬品。今後も、安全体制を強化する取り組みを継続していく予定です。
調剤過誤防止のワンポイントテクニック
処方せんに記載して自己鑑査の精度を高める
木島薬品が運営する中野北薬局では、薬を取りそろえたときに、自分が集めた薬が正しいかを確認するために、処方せんを活用し、自己鑑査の精度を高めています。
自己鑑査に使用するのは、ファクスで送られてきた処方せんのコピーです。同薬局では、多くの処方せんがファクスで送られてくるため、それを活用して集めた薬の数、規格、剤形をファクス処方せんに記入して、処方せんと相違がないかを確認し、間違いがないことをチェックしていきます※。
例えば、「モーラステープL40mg×1日1枚×21日分」の処方の場合。モーラス(一般名:ケトプロフェン)には、テープ剤とパップ剤の2種類の剤形があります。また、モーラステープには20mgと40mgの2種類の規格があります。薬を集めた後に、集めた薬が「モーラステープ」であり、規格が40mgであることを確認したら、ファクス処方せんの規格部分に○で囲みます。
さらに、モーラステープは1袋7枚入りですから、21枚だと3袋です。まず、集めた数をファックス処方せんに3袋と記載しその数と処方せんの記載枚数が一致しているかを確認します。
ほかにも例えば、錠剤で「1日3錠×7日分」が処方されているケースでは、集めた錠剤がきちんと21錠かを確認し、集めた錠数を記載してチェックします。
目で確認するだけでなくファクス処方せんに、集めた薬の数や、確認したことを記載するなどして、ひと手間加えることで頭の中が整理され、ミスを減らすことにつながります。
※最終的な鑑査は、患者さんが持ってこられた実物の処方せんで行います。
ファックスで送られてきた処方せんに、集めた薬の数、規格、剤形を記入して、処方せんと相違がないかを確認する。 <木島薬品>
- 設立:
- 1997年
- 本社所在地:
- 長野県木島平村
- 店舗数:
- 7薬局
- 社員数:
- 27名


