薬局マネジメント
薬局でPT–INRを測定し服薬指導に生かす
すこやか薬局グループ 北エリア長知花店管理薬剤師 比嘉浩一氏

沖縄市の調剤薬局チェーンの薬正堂が経営する、すこやか薬局ではワーファリン服用患者さんに対して、薬局で簡易型の血液凝固迅速分析装置「コアグチェック」を使用してPT–INRを測り、服薬指導に生かす取り組みを始めています。
より的確なアドバイスをするために
PT–INRは、抗凝固作用を国際的に統一された基準で表現する検査値。ワーファリンは、感受性の個体差が大きいことや、食事などによって影響を受けやすいこともあり、添付文書の使用上の注意にも、血液凝固能検査を行い、その結果に基づいて投与量決定や抗血栓効果の管理を十分に行いつつ使用する旨が記されています。そのモニターに、多くの医療機関がPT–INRを用いています。
PT–INRは、正常を1と規定し、正常に比べて何倍、凝固しにくくなっているかを示します。ワーファリン投与におけるPT–INRは、患者さんの疾患や年齢にもよりますが、1.6~3.0程度でコントロールされるのが一般的です。
同薬局が使用するコアグチェックは、指先の自己穿刺によって少量の血液を採取し、測定できる簡易型の血液凝固迅速分析装置です。測定結果が1分程度で分かる簡便さが特徴です。
処方が長期化している昨今では、コントロールが安定していれば、1カ月を超えるワーファリンの処方も少なくありません。「患者さんの中には、次の受診予定日までの間に『皮下出血があったけど大丈夫だろうか』と薬局に相談に来られる患者さんもおられます」と、すこやか薬局グループの北エリア長であり、すこやか薬局知花店薬局長の比嘉浩一先生。「PT–INRを測ることができれば、より的確なアドバイスができると思って始めました」と話します。
同薬局では、3カ月間に100人程度のワーファリン服用患者が来局しており、薬局でのPT–INRの測定が、患者さんの薬物治療にどう貢献できるかを探る目的もあったといいます。
早期受診につながったケースも
測定は、広島大学大学院医歯薬総合研究科臨床薬物治療学教室の森川則文先生らとの共同研究の一環として、薬正堂が運営する4薬局で、患者さんの同意を得て実施しました。測定に必要なコアグチェックは同教室から貸与されたものを使用。血液を点着させるテストストリップの費用(1回600円程度)は、薬局の負担としました。
実施を前に、参加する4薬局の薬剤師が集まり、指先穿刺や指頭血を実際に採取するなどの研修会を開き、患者さんへの指導方法を学びました。また、患者さんに研究への参加意思を確認する同意書(PDF:106KB)を作成。それらの整備を行った上で、2010年2月から測定を開始しました。
約5カ月後の7月末の時点で、同意を得てPT–INR測定を行った患者さんは17人。合計45回の測定を実施。その結果、薬正堂としてはコントロール良好(1.5~3.0)だった患者さんは14人で、全体の8割を超えており、ほとんどのケースできちんとコントロールされていることがわかりました。
しかし、中にはこの取り組みをきっかけに、ワーファリンとの相互作用が問題になる青汁を摂取していることが分かったケースもありました。84歳の女性で、約3年前からワーファリン1日量3mgを服用している患者さんです。PT–INR測定の説明をしているうちに、患者さんから「実は2カ月前から青汁を飲んでいる」と打ち明けてきたそうです。
青汁は、ビタミンKを多く含み、ワーファリンの作用を減弱化することが知られています。実際、PT–INRは1.2と低かったそうです。そこで薬剤師は、患者さんに説明し青汁を回収し摂取を中止してもらった上で、ワーファリン3mgの服用を続けてもらいました。そして1週間後と2週間後にPT–INRを測定したところ、相変わらず値が低いまま推移していました。
「青汁の摂取を中止すれば、当然、PT–INRが治療域に入ると思っていたのですが、2週間後も1.2と低いままでした。そこで、処方医に連絡して状況を説明したところ、医師から『すぐに受診するように』と患者さんに連絡が入ったようです」(比嘉先生)。受診後、処方は1日3mgから3.5mgへと増量となったそうです。
診療所の近隣にある薬局では、診療所の医師からの依頼でPT–INRを測り、その結果をもとに医師が処方量を決めるといった連携を行いました。血液凝固能の検査は、診療所でも実施しますが、分析を検査会社に委託しているため、すぐに結果が分かりません。「コントロールが不安定な患者さんについては、『薬局で測ってほしい』と医師から連絡が入ります」(比嘉先生)。薬局での測定値を参考に、医師がワーファリンの量を変更するといったケースもあったそうです。
歯科医と連携した薬局もあります。「最近では、抜歯前にワーファリンの投与中止は行いませんので、『念のため測ってほしい』と歯科クリニックの先生から連絡をもらうことがあります」と比嘉先生は説明します。
抜歯した数日後の朝、起きたら口の中に血液が溜まっていたという患者さんの測定依頼を受けたこともありました。測定の結果、PT–INRは3.5。歯科医に検査結果を報告し、患者さんに早めに内科受診するように促したそうです。
薬局で測定し受診勧奨するシステムを
このように、すこやか薬局での取り組みでは、薬局でPT–INRを測ることで、患者さんが受診予定日よりも早く、医師の診察を受けられたケースがいくつか見られました。研究のための測定は2010年7月でいったん打ち切っていますが、希望者にはその後も、薬局でPT–INRを測定する試みを続けています。
比嘉先生は、「沖縄には、ゴーヤやフーチバー(沖縄よもぎ)といった特有の食材があります。そうした食材がワーファリンの薬物動態に与える影響についての情報は、ほとんどありません。気にせず摂っている患者さんも多いと思います。次の受診までの期間が長いこともあり、コントロールが変化している可能性もあると思います。薬局でPT–INRを測って受診を促すようなシステムが必要ではないでしょうか」と話します。同薬局でのこの取り組みは、その一歩になるといえそうです。


