〜東京都 品川・大田区 座談会〜 骨粗鬆症治療~臨床の実際と課題

日本の高齢化率(65歳以上人口比)は2007年に21%を超え、「高齢社会」を上回る「超高齢社会」に突入しました。長寿が一般的となるなか、いかにQOLの高い生活を送るかという課題はますます重みを増しています。そのQOLを下げ、要介護を余儀なくさせる大きな要因となるのが脳卒中などの心血管障害や骨折です。したがって、骨折予防としての骨粗鬆症治療は、今や社会の要請となっています。
今回は、骨粗鬆症の専門外来で診療に従事されている先生方に、診療の現状と課題、治療に対するお考えなどを語り合っていただきました。
参加者東京労災病院 第二整形外科 部長 萱岡 道泰 先生(司会)
東邦大学医療センター大森病院 整形外科 助教 奥秋 保 先生
昭和大学病院 整形外科 助教 永井 隆士 先生

東京の城南地区において、品川区の昭和大学病院、大田区の東邦大学医療センター大森病院、そのさらに東京湾沿いにある東京労災病院は、三角形をなす位置関係にあります。本日はこの地域に骨粗鬆症の患者さんがどれくらいおられ、実際に3病院でどのような治療が行なわれているのか、また薬物治療に対してわれわれ専門医はどのような考えを持っているのか、といったことを話し合っていきたいと思います。では、昭和大学病院の永井先生から専門外来における骨粗鬆症診療の現状についてお聞かせください。
当院では、骨粗鬆症外来を毎週金曜日の午前中に行っています。骨粗鬆症外来では1日あたり25名ほどの患者さんが受診され、私自身の外来には10名ほど来院しています。トータルすると年間400名くらいの患者さんをフォローしていることになると思います。
奥秋先生、東邦大学医療センター大森病院ではいかがでしょうか?
私どもの場合は奇数週である第1・第3・第5水曜日の午後と、偶数週の第2・第4木曜日の午後に骨粗鬆症外来を開いています。1回の外来で30名前後の患者さんが来られているのではないでしょうか。そのなかで実際に継続して診ている方は、永井先生のところと同様で年間400名前後になると思います。
私どもの東京労災病院も似たような状況で、薬物治療で順調に経過している患者さんに関しては3カ月に1度の外来診療を行い、全体としてやはり年間400名前後の方をフォローしているかたちになります。当院では木曜日の午後に骨粗鬆外来を設けているのですが、時間の余裕がなく、自分の一般外来枠でも骨粗鬆症の患者さんを診ているのが現状です。この点に関しては、地域の開業医の先生方と、初期診療後のフォローにおける連携をさらに深めることにより、専門外来の機能をより強化できると思っています。一つの課題ですね。
では次に、先生方のところに初診で来られた患者さんに対して、どのように検査ないし診断を進めておられるのでしょうか?
初診の患者さんは、腰痛などの症状があって来られる方と、検診で骨粗鬆症が疑われて受診に至る方とに分かれます。症状のある方は通常どおりレントゲン検査となりますが、検診から来られた方についても骨粗鬆症検査の一環としてあらためてレントゲン検査を行います。私どもではスクリーニングとして、胸椎、腰椎、股関節のレントゲンを撮らせていただいています。
骨塩定量検査については、予約していただいたうえで後日、血液検査とともに実施しています。また尿中NTX(血清Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド)を測定しているのですが、初診日に容器をお渡しし、早朝第二尿を骨塩定量検査の日に持ってきていただくようにしています。
骨密度測定はDXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)ですか?
はい。私どもではHologic社のQDR Discoveryが入っており、第2~4腰椎の正面と大腿骨頸部、橈骨の3カ所を測定しています。
奥秋先生のところはいかがでしょうか?
初診の状況は永井先生とそれほど変わりませんが、検診から来られる方は少ない印象があります。腰痛や膝痛などで整形外科を受診され、患者さんご自身が骨粗鬆症を心配して専門外来に来られるケースのほうが多いようです。また院内からの紹介ということでは、むしろ他科からが多数を占めています。乳がんの化学療法で抗エストロゲン剤を用いる乳腺外科や、ステロイド剤を使用するリウマチ・膠原病内科などからの紹介が主ですね。
骨密度測定については、院内他科でMD法(手部X線骨密度測定法)を行ったうえで紹介というケースもありますが、基本的には当科でDXA法を実施しています。時間的なことを考慮して、現在は第2~4腰椎正面のみを測定しているため、放射線科に連絡するとおおむね20~30分以内に対応してくれています。
骨代謝マーカーに関しては、当院では尿中DPD(デオキシピリジノリン)を測定しています。永井先生がおっしゃるように第二尿を測りたいのですが、容器をお渡ししても採ってきていただける方はそれほど多くはなく、主に診療時間中に採尿しているのが実情です。
当院でもDXAに関しては、レントゲン検査技師さんにお願いすればほとんど当日中に撮っていただけています。検査項目についてはみなさんとほぼ同じで、骨代謝マーカーはNTXを測っています。
東邦大学医療センター大森病院と当院は近接しているため、やはり奥秋先生の印象と同様で骨粗鬆症の検診を経て来られる方は少なく、受診された方の中から私たちが見つけるケースが多いと思います。
品川区の保健所や保健センターで転倒予防教室などが開かれていたころは、転倒予防教室で骨粗鬆症の検診が行われていたのですが、最近は予算の都合で縮少傾向にあるようです。検診が減るとどうしてもスクリーニングが行われづらくなり、検査を受けていない潜在的な患者さんがたくさんいらっしゃると思います。
確かに以前は町単位で行う骨粗鬆症検診のお知らせなどをよく目にしたものです。私も、50歳前後の若い患者さんには「ときどき骨密度を測ってみるといいですよ」とお勧めしたりしていました。そういう機会が減っているということは一つの問題点ですね。
近隣の開業医の先生方からの紹介はどのくらいあるのでしょうか?
頻度としてはそれほど多くはないですね。医局出身の先生からDXA測定を依頼されたりすることはありますが、近隣の先生方が骨粗鬆症を疑って紹介してくださるケースはあまりないのが現状だと思います。
うちも状況は同じです。骨粗鬆症に重きを置いている整形外科の先生は必ずしも多くはないという印象があります。
骨粗鬆症があるかもしれない、という目で見ないと、なかなか検査に進むのは難しいということでしょうね。専門医である先生方は、骨粗鬆症をいち早く発見し、治療を開始するうえで、どのあたりの年代のどのような方々をターゲットに設定すべきと考えていらっしゃいますか?
自分の診察経験からは、閉経を迎えて6~7年くらいまでは、それほどガタンとは骨密度が落ちてこないという印象を持っています。ですから一般的な閉経時期を50歳としますと、55~56歳くらいの方は一度骨密度を測定していただいて、減少している方は治療ないし定期的なフォローの対象に入るという捉え方です。
奥秋先生はいかがでしょう?
骨密度が下がる時期については私も同じ印象です。ただ、現在は骨密度を上げる作用の薬も種々ありますので、下がったものを上げるというよりも、今後はむしろ下がらないようにすることを考えていったほうがいいのではないかと。具体的には、YAM(若年成人平均値)の上限に当たる44歳前後で骨代謝マーカーを測定し、高回転であれば早めに薬物治療の導入を検討してもいいのではないかと思っています。
それは私も同感ですね。
早期発見が重要なのはわれわれの共通認識だと思いますが、実際に44~55歳くらいの女性を骨粗鬆症の検査につなげるのはなかなか難しいのではないでしょうか。それこそ検診を充実してくれればいいのですが。
先生方の外来に来られる患者さんはやはり高齢の方が中心なのでしょうか?
骨粗鬆症外来の患者さんは二極化の傾向にあります。60~65歳くらいまでのグループと80歳以上のグループ。最近は元気なお年寄りが多いので、90歳前後の方もいらっしゃいます。
平均すると60歳代の後半になると思います。先ほどお話しましたように、最近は乳がんの術後に抗エストロゲン剤を服用されている方が紹介となるために、40~50歳代の方も少し含まれるようになりました。しかし基本的に原発性ということでは60歳代後半の方が多くなります。
私は骨粗鬆症だけでなく、膝痛や、腰椎の圧迫骨折後の患者さんなども診ているわけですが、足元のおぼつかない方を娘さんが連れてこられるケースがしばしばあります。80歳代の患者さんであれば、娘さんは50~60歳前後ということになるでしょう。その方々に「20年後の自分と思って今のうちに検査をしたほうがいいですよ」とお勧めしています。実際に検査を経て、母娘でお薬を飲んでいただいているケースもあるんですよ。
骨粗鬆症外来に来られたご家族が、円背の患者さんを見て「私も心配だから検査してほしい」と言われることは多いのですが、萱岡先生のように付き添いの娘さんに私どもから検査を勧めるということは良い方法ですね。今後の参考にさせていただきます。
私も勉強になりました。
今の若い方々に対しては、アンチエイジングという意味合いも含めて骨粗鬆症のお話をすると、比較的検査を導入しやすいのかなという手応えを感じています。
3病院の骨粗鬆症外来がいずれも年間400名ほどの患者さんをフォローしているということでしたが、私は治療の軌道に乗った患者さんはある程度、近隣の先生方におまかせすることができないかと考えています。みなさんはいかがでしょうか?
実際に紹介状を書いてフォローをお願いしているケースもあります。ただし、大学病院としてはやはり薬物治療の効果を検証したいので、「骨代謝に関する薬剤は大学病院のほうで管理させてください」「できれば同じ薬剤を処方してください」といったことを紹介状に書かせていただいています。
当院ではだいたい半年ごとに骨密度と骨代謝マーカーを測定しているのですが、骨密度の減少がある程度落ち着いて1年~1年半が経過し、骨代謝マーカーも下がり過ぎず基準値内に安定していることが確認できれば、近隣の先生方に紹介するようにしています。とはいえ、開業医の先生方のところで必要な検査をすべてカバーするのは難しいと思いますので、日ごろの処方をお願いしつつ、半年に1回は私どもの外来に予約のうえ来ていただく方法をとっています。
今お話を伺って強く感じるのですが、ただ紹介すればいいというのではなく、先生方がフォローを通して患者さん一人ひとりのデータをさまざまに分析されていることが、今後重要な意味を持つことになると思います。
骨粗鬆症の患者さんはあまり愁訴がないケースが多いのですが、3カ月~半年に1回とはいえ、大学病院にわざわざ来ることに対する通院コンプライアンスはいかがでしょうか?
予約の場合はほとんどの方がいらっしゃいます。定期的に大学病院に来られることで安心感を得ている患者さんも多いのではないでしょうか。
予約の有無でずいぶん違いますね。予約外来ですと、おおむねきちんと来ていただいているようです。
基幹病院の専門外来としての機能をより充実させるためには、近隣の先生方との役割分担に加え、永井先生や奥秋先生と同様の意識・視点を持つ若い医師を育てていかなければなりません。この点についてご意見をお聞かせください。
潜在的な患者さんが多いだけに、骨粗鬆症に重点を置いて診られる若い先生を増やさなければいけないという思いは強いです。骨密度測定や血液検査のデータを検討するのは、外科医からみると内科的な側面が強いのは確かでしょう。しかし骨・関節に関わる整形外科・運動器外科としては、予防医学的な面からも骨粗鬆症は疎かにはできない疾患です。ぜひ興味を持ってもらいたいです。
骨代謝マーカーがどういうものかわからない。骨密度も低いか高いかだけで、その意味するところが理解できない。だから興味も湧かない、という若手の先生が少なくないのが現状でしょう。医局内で勉強会を開いたりすることも必要なのではないかと考えています。
東京労災病院では、橈骨遠位端骨折や頸部骨折などの手術を年間150~160件はしていると思いますが、これとリンクさせるかたちで術後に骨粗鬆症の検査や治療も行うように指導しています。若手の医師はどうしても手術のみに気をとられていることが多いのですが、こうした機会に動機付けをしていき、興味を持って骨粗鬆症治療に当たるように導きたいと考えています。
確かに、手術をしてリハビリをオーダーし、元気に退院された、というところで終わってしまうのが若い先生方の常ですね。そこでさらに、「じゃあ何でだろう」と骨折が起こった原因にまで目を向けてほしいと。
骨折の患者さんに説明するときに、若手の医師であっても必ず骨粗鬆症について触れているはずです。そこからあと一歩踏み出せば、検査や治療にまで意識が及ぶのではないでしょうか。
近隣の医療関係者への情報提供、指導に関してはいかがでしょうか?
大森三師会という会を先生もご存知でしょうが、医師・歯科医師・薬剤師の集まりが継続的に開かれており、先日も依頼を受けて骨粗鬆症の話をしてきました。あとは当科の教授の専門の関係でリウマチの勉強会が多いのですが、そこでステロイド性骨粗鬆症の話をさせていただいたりしています。
薬剤師との勉強会という話が出ましたが、ビスフォスフォネート製剤が最初に発売されたころ、私の患者さんが調剤薬局の先生から「薬の安全性に疑問がある」というようなことを言われた経験があります。その当時と現在で、薬剤師の意識の違いを感じますでしょうか?
私が最初に薬剤師に話をさせていただいたのは5年ほど前になります。そのころにはもうビスフォスフォネート製剤が浸透していたので、薬剤師は安全性よりもむしろ服薬コンプライアンス──内服の仕方の指導などに話の重点を置いてくださっていました。
ビスフォスフォネート製剤に関しては、食道潰瘍の副作用がだいぶ話題にされましたが、私は比較的飲みやすい薬だと思っています。
私の経験でも、服用を続けていて「もう飲みたくない」とおっしゃる方はごくごく少数です。私の印象としてはむしろ、「骨密度が上昇する」というインパクトが強烈すぎたあまり、使い方にやや配慮を欠いているような気もしています。とにかくビスフォスフォネート製剤を出しておけばいい、というように。
私はビスフォスフォネート製剤が出始めのころは、患者さんにすごく時間をかけて「朝起きてすぐに飲んでください」「食事の前に飲んでください」「お水をしっかり飲んでください」「飲んでから30分は横にならないでください」ということを詳しく説明していました。しかし最近は薬剤師がしっかり説明してくださるので、私の説明の時間は少し減らしてもいいのかなとも思っています。
私は貧乏性のせいか(笑)、話し始めるとどうしても時間をかけてしまいます。確かにその後、薬剤師からも同じような説明があるようです。まあ2回詳しく説明があれば指導を守っていただけるのではないかということで、今も細かく説明するようにしています。
服用後30分は横にならないという指導に対して、直立不動でいなければいけないと患者さんが誤解していたというエピソードがありますが、実際にそのようなご経験はありますか?
直立不動ではないですが、「つらい」と言われる患者さんのお話を聞いてみたら、座ったままじっと動かないようにしていたというケースはありました。「動いてもいいんですよ」「寝なければいいんですよ」と3回くらい説明を繰り返して、ようやく理解していただいた方もいます。

「台所仕事をしてもいいんですよ」とお話すると、「動いていいのですか?」と意外そうにされる方がちらほらいらっしゃいますね。
誤解を解く方法として、「お勝手仕事をしてもいいんですよ」「新聞を読んでいてもいいんですよ」「散歩をしてもいいんですよ」と具体例を挙げるのも一つの説明の仕方ではあると思います。服薬指導についてもう一つ、「水をしっかり飲まなければいけない」という点についてはどのように説明されていますか?
「寝ている間に汗をかくので、朝は脱水状態に近くなっています。水分補給という意味でも水をしっかり飲むようにしてください」とお話しています。
「コップ一杯飲むのはたいへん」という方も少なくないので、「コップ半分くらいでもいいですから」と説明しています。「食道にひっかからないように洗い流す、胃袋に落とすようなつもりで」と。
私も奥秋先生と同様に、「寝汗をかいて血がドロドロになっているときに、しっかり水を飲めば、血をサラサラにする効果もあるんですよ」といった説明をしています。テレビの情報番組のような言い方をすると、より患者さんの胸に届くということはあるようです。
永井先生、服薬指導に関してデータを用意してくださっているということですが。

ええ、まず先ほども話に出ました調剤薬局の薬剤師の指導に関してですが、このスライド(図1)はリセドロネートを処方した110名の患者さんに関するデータです。外来で私が問診したところ、「朝飲めます」という方が92名(82.7%)、「朝に薬を飲む習慣はないし、飲んで30分は起きていられない」という方が18名(17.3%)いらっしゃいました。この18名の方が調剤薬局で薬剤師の話を聞き、次の外来で私が「いつ飲んでいますか?」とお尋ねすると、「起床時に飲んでいます」という方が18名中8名いらっしゃいました。つまり、薬局で話をしていただくことで、「じゃあ朝に飲んでみよう」と気持ちが切り替わるケースがけっこう多いわけです。
一方、「どうしても朝には飲めない」という患者さんがいらっしゃるのも事実です。私はそうした方々に対しては、「空腹時であるなら、お昼前や午後3時ころ、あるいは晩ご飯の前などでもけっこうですよ」とお伝えしています。
ありがとうございました。私自身も、今後はそのような指導も行っていきたいと思います。
先ほど奥秋先生から、薬剤選択においてもう少し配慮が必要ではといったお話がありましたが、ここで骨粗鬆症治療薬のファーストチョイスをどのような基準で行っているのかお話いただきたいと思います。
ステロイド性骨粗鬆症などの20~30歳代の若い方では、比較的ビスフォスフォネート製剤を使うことが多いです。また閉経後の方についても、50~60歳代で骨密度が良好であればビタミンD3製剤と運動療法、あるいは食事療法だけで経過観察とするケースが大半です。50歳代後半から60歳くらいまではSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)も選択肢に入れつつ、60~70歳以上になりますとビスフォスフォネート製剤を選択する傾向にあります。
私は年齢で分けるというよりは、骨代謝マーカーの値を最重視しています。やはり高骨代謝回転であればファーストチョイスはビスフォスフォネート製剤ですね。ただ、骨密度も代謝回転もそれほど悪くないという方でしたら基本的にはビタミンD3製剤を投与しますし、血中のucOC(ビタミンK依存性蛋白)が上がっているようでしたらビタミンK2製剤を処方しています。SERMは、整形外科手術が検討されるような症例では静脈血栓塞栓症のリスクに配慮しなければならないため、どちらかというと維持療法的な位置付けで使っています。
私の場合はお二人の意見を合わせたようなイメージです。永井先生に近い考え方で年齢に応じて薬剤を使い分けますし、奥秋先生と同様に骨代謝マーカーの値も目安にしています。
最初から2剤ないし多剤併用でいくケースはどの程度あるのでしょうか?
YAM値が低い方の場合は、ビスフォスフォネート製剤とビタミンD3製剤を一緒に使っています。ただ私の教室では、単剤投与による治療成績を調べたいという理由もあって単剤使用が非常に多く、現在は単剤と併用が五分五分くらいではないでしょうか。
基本的には最初は単剤ですね。どうしてもそれで変化がない、むしろ骨密度が下がってくるという場合に多剤併用を検討しています。
私も同感です。最初はやはり、薬剤の効果がはっきり見極められる治療がしたいですからね。
実はつい先日、テレビの健康番組で骨粗鬆症が取り上げられていました。整形外科の先生と産婦人科の先生が出演されていたのですが、番組中に患者さんからの質問に先生方が答えるコーナーがありました。私が特に興味を持って聞いたのは……先生方、メモをとっていただいていいですか?
65歳の女性。腰椎の圧迫骨折が1カ所あります。YAM値は65%。
通常の原発性の骨粗鬆症です。
奥秋先生、こうした患者さんにはどのような薬剤を出されますか?
YAM値65%くらいですとちょっと悩みますね……骨折もある、と。この情報からまず頭に浮かぶのはビスフォスフォネート製剤です。
永井先生はいかがでしょう?
私もこの状況ですとビスフォスフォネート製剤を選択します。単剤で選ぶでしょうね。
ではビスフォスフォネート製剤かSERMという選択になった場合、前者を選ぶアドバンテージはどこにあると思われますか?
SERMの海外のデータなどを見る限りでは成績は良いようなのですが。あくまで骨密度を上げたり、さらなる骨折を予防する目的では、私はビスフォスフォネート製剤に期待します。
私も同感です。
私も同じ意見なのですが、興味深いことに、そのテレビ番組中で整形外科の先生はビスフォスフォネート製剤を、産婦人科の先生はSERMを挙げていました。異なる主張があっていいとは思うのですが、その番組を見た患者さんは「じゃあどっちがいいんだ」と非常に悩まれると思うのです。啓発という意味では失敗だったのではないかと。
骨粗鬆症治療の最終目的は骨折予防にあります。そうした共通認識に立ち、次の骨折を強力に予防するというエビデンスのある薬剤をまず選択すべきではないか。統一見解のもとで使っていくべきではないか。番組を見ていて、私はそのような印象を持ったわけです。

こちらのスライド(図2)は、リセドロネートの週1回投与製剤と1日1回投与製剤の服薬コンプライアンスを比較した海外のデータです。週1回投与製剤において、1年間の服薬継続率は約13%改善されています。ただこの報告によりますと、週1回投与にしても半分以上はドロップアウトしていることになりますが、先生方のご経験と照らし合わせていかがでしょうか?
私の印象では少なくとも8割は服薬を継続しています。
週1回投与に関しては私も8割以上は継続しているように思います。最近は週1回投与製剤を処方することが多いのですが、1日1回投与製剤を出した患者さんでも7~8割の継続率というところです。
私のところでも8割はキープできていると思いますので、われわれの地区では全体的にこの海外報告よりも服薬コンプライアンスがいいということですね。
では、週1回投与製剤と1日1回投与製剤に対する個々の患者さんの反応はいかがでしょうか?
やはり週1回のほうが飲みやすいという方が多いですね。
逆に1日1回のほうが忘れなくていいという方はいらっしゃいませんか?
先生のおっしゃるとおりで、薬は毎日飲むものだという意識が強い方もいらっしゃいます。またずっと1日1回投与製剤を飲んできて、週1回投与製剤が発売されたときに「どちらにしますか?」とお尋ねしたところ、「もう習慣になっているので1日1回でお願いします」という方もいらっしゃいました。ですからお一人お一人の捉え方に応じて選んでいただくようにしています。
そうですね、1日1回から週1回に替えて楽になったという方もいらっしゃいますが、6~7割の方々はそのまま1日1回投与製剤を継続しています。今は基本的には週1回投与製剤を出していますが、「毎日のほうが」という希望があれば変更するようにしています。
1日1回投与よりも週1回投与のほうが、胃腸障害などが出にくいという利点もあるかと思うのですが、先生方はどのような感触を持たれていますか?
1日1回投与で「ちょっと胃がむかむかする」という方に「では週1回投与製剤に替えてみましょうか」と提案し、実際に変更したケースは2~3割でしょうか。「そこまでは気にならない」と1日1回投与を継続する方も少なくありませんし、もちろん変更して調子が良くなったという方もいらっしゃいます。
1日1回投与で体調が思わしくない方については、週1回投与に換えて服薬継続率が高くなったという印象はあります。
週1回投与製剤で、決めた曜日に飲むのを忘れてしまうことがありますよね。そのような場合、患者さんにどういう説明をされていますか?
1~2日遅れても大丈夫ですよ、というお話はしています。
たとえば金曜日に飲むところが土曜日にずれてしまうと、次からはもう土曜日に飲まなければいけないと自分で自分を追い詰めてしまう方もいるようです。ですから私の場合は、また金曜日に戻してもいいですよと必ず付け加えるようにしています。
先ほどのお話で3病院共通して海外報告よりも服薬継続率が高いということでしたが、患者さんの服薬に対するモチベーションをいかに維持・向上していくかという点に関してお聞かせください。
半年ごとに測定している骨密度と骨代謝マーカーの値をもとに、続けて飲んでいただけるよう指導しています。患者さんご自身が一番気になるのは骨密度ですが、顕著に上昇というケースは多くはありません。したがって「下がっていない」ことの意義を理解していただくことが中心になります。
骨代謝マーカーについては、まずこれがどのようなものなのかを説明することが大切ですね。そのうえで、基準値内に下がっていたり、MSC(最小有意変化)を超える変化が認められた場合には、「こういう状態で安定していますよ」と説明しています。
私のところでは定期的な骨代謝マーカーの測定は1年に1回なのですが、新規に薬が出た場合には半年後に一度測るようにしています。ビスフォスフォネート製剤を選択する場合は、骨代謝マーカーの値が高いことが多いので、最初に患者さんに破骨細胞の働き、骨代謝マーカーとの関係、破骨細胞の活動を阻害して骨の吸収を防ぐ薬の効果を5~6分かけてお話しています。そのうえで薬を飲んでいただき、半年後に骨代謝マーカーを測ると、おおむね成績が良いのです。
下がりますよね。
これだけ良くなりましたよ、と説明すると患者さんにかなり喜んでいただけます。骨代謝マーカーはモチベーションを高める手段になりますね。
私も同様で、ビスフォスフォネート製剤を3カ月から半年投薬した後に、NTXの改善などで服薬継続の動機付けをしています。1年経過の段階で骨密度を測り、数値が上がっているとさらに患者さんは喜ばれますね。
では一方で、検査で治療効果が認められない場合には次の一手をどうされますか?
採尿・採血によってカルシウムや、今はucOCも測定していますので、それらの値に応じてビタミンD3製剤やビタミンK2製剤を併用するという考えです。
私もやはり骨密度を上げるには、ビスフォスフォネート製剤+ビタミンD3製剤の2剤併用が有効ではないかという印象を持っています。さらに昭和大学整形外科は、ダイナミックフラミンゴ療法(開眼片足立ち訓練)の発祥の教室でもありますので、その指導を通じて大腿骨頸部の骨密度を上げるようにしています。
奥秋先生がおっしゃるように最近はucOCが容易に測れるようになったこともあり、ビタミンK2製剤との2剤併用ないし多剤併用というケースもままありますね。
逆にビスフォスフォネート製剤の投与を中断されたケースはどのくらいありますか?
ほとんどありません。ただビスフォスフォネート製剤は3~5年でいったん休薬という考え方もあって、その後は維持的な意味合いでビタミンD3製剤やビタミンK2製剤、SERMなどを投与しています。
私は中断が2例ほどあり、最近のケースでは男性でYAM値が85%まで改善したので、あとは運動と食事でコントロールして経過をみることにしました。しかし中断するとやはり骨密度は下がってきます。もともと年配の女性の方が非常に多い外来ということもあり、中断ということはほとんどありません。
患者さんご自身がやめたがらないですよね。
私はここ2~3年で12~13名中断した方がいますが、つい最近、そのなかの1名の骨密度を測定したところ、やはり下がっていたので服薬を再開しました。今後このようなデータがもっと揃うといいですね。
今日は目からウロコの情報もあり、私にとっても非常にためになりました。今後も先生方とともに、骨粗鬆症診療の患者さんを減らし、骨折予防に専念していきたいと思います。どうもありがとうございました。


